亡くなった人は三十三年で祖霊になり、山にとどまって盆と正月に帰ってくる——この見方は、日本人が古くから持っていたものとして語られることがあります。ただし、それがいつ書かれたものかをたどると、見え方が変わります。刊行年をつけて並べます。
並びは成立の古い順で、重要さの順ではありません。
三十三年で祖霊になること、霊が山にとどまること、盆と正月に帰ってくること。これらをひと続きの体系として示したのは、柳田国男『先祖の話』(一九四六年)です。東京への空襲のさなかに書かれ、終戦の翌年に世に出ました。
それぞれの要素は、もっと古くからあります。ですが「三十三年」「山」「盆と正月」を一つの筋につないだのは、この本です。古代から連続してこの形だったのではありません。
『日本書紀』にも『延喜式』にも祭祀の記述はあります。ただしそれは皇祖神や氏の祖神をめぐるもので、家ごとの先祖を祀る営みとは別のものです。研究の側からは「古代の日本で祖霊が祀られていた証拠を見つけるのは難しい」という指摘が出ています。
山と死者の霊との結びつきについて、柳田本人に混乱があったという検討が二〇二〇年に出ています。『先祖の話』を「空襲下で急いで組み直された著作」と評する見方です。この系譜は、柳田の説を退けるためのものではありません。いつ、どういう状況で書かれたかを添えることで、読み手が距離を測れるようにするためです。
『先祖の話』が戦時下に書かれたことは学術文献で裏づけられますが、執筆の具体的な月日までは確認できませんでした。「一九四五年の何月」という書き方はしていません。
『盂蘭盆経』が『大正新脩大蔵経』第十六巻の第六八五番であることは確認しましたが、頁数は確認できていません。
| 出典 | 使った箇所 | 状況 |
|---|---|---|
| 『日本書紀』巻第五 崇神天皇六年条 | 01・02節 | 原文を確認 |
| 『延喜式』神祇式(927年撰進・967年施行) | 01・02節 | 撰進年と構成を確認 |
| 『仏説盂蘭盆経』(『大正新脩大蔵経』第16巻685番) | 01・03節 | 頁数は確認できていない |
| 圭室文雄『葬式と檀家』吉川弘文館 1999年 | 01節 | 書誌を確認 |
| 折口信夫「国文学の発生(第三稿)」『民族』第4巻第2号 1929年 | 01節 | 初出誌と年を確認 |
| 柳田国男『先祖の話』筑摩書房 1946年(第21・51・66節) | 01・02・03節 | 節の位置まで特定 |
| 鈴木岩弓「柳田國男の祖先崇拝論」『論集』第10号 1983年 | 01節 | 巻号と頁を確認 |
| 由谷裕哉「柳田國男の霊山観と祖霊論との関わり」2020年 | 01・02節 | 記述を確認 |
| 黒田秀教「日本古代祖先祭祀之形成」『台大日本語文研究』第27期 2014年 | 01・02節 | 論旨を確認 |