これから起こることは、あらかじめ定まっているのか。それとも、選ぶ余地があるのか。定まっているとする立場、自由があるとする立場、両方を同時に立てる立場、問いの形そのものを組み替える立場があります。同じ体裁で並べます。判定はしません。
並びは成立の古い順で、順位ではありません。一つの答えは同じ長さにそろえてあります。資料の多い立場ほど長くはなりません。
一神教は、定めを外から置きます。イスラムでは善悪ともに含めた定めを信じることが信仰箇条に数えられ、カルヴァンは永遠の決議によってあらかじめ定まっているとしました。インドに始まる系統は自分の過去の行いに置きます。同じ「決まっている」でも、決めた者の位置がまるで違います。
ここが、この問いでいちばん誤解されやすいところです。上座部は「すべては過去の業ゆえだ」という説を、名指しで退けています。そう考えると、なすべきことへの努力そのものが失われるからです。ユダヤ教は「すべては見通されているが、選ぶ自由は与えられている」と、両方を同時に立てます。カトリックは、恩寵は自由と競い合わないとします。定めを認める側の多くが、努力の余地を同時に立てています。
カントは、自然の因果と自由はどちらも成り立つとし、衝突して見えるのは次元が違うからだとしました。ハイデガーは、投げ入れられているところから始めよと言い、決まっているかを問いません。禅は問いをいまへ戻します。二つのうちどちらか、という形を取らない答え方です。
「量子力学は決まっていないことを示したから、自由意志がある」という言い方があります。これは物理学の主張ではありません。二つの段に分けて書きます。退けるためではなく、どこまでが物理学の話かを示すためです。
波動関数の時間発展を書く方程式そのものは、決まった形をしています。非決定的に見えるかどうかは、どの解釈を取るかで変わります。多世界解釈やボーム力学は決定論を保ちます。出典:スタンフォード哲学百科事典「Causal Determinism」(2023年改訂)
先立つ原因をすべて与えてもなお定まらない選択は、偶然に左右されたということでもあります。それを自由と呼べるかは、別の議論として残ります。出典:スタンフォード哲学百科事典「Free Will」3.1節(運の議論)
よく引かれるベルの定理は、測定の設定を自由に選べることを前提として使っています。自由意志を導いたのではなく、仮定の側に置いているという関係です。出典:ベル『Physics』1巻3号 1964年 195〜200頁/スタンフォード哲学百科事典「Bell's Theorem」(2024年改訂)
円筒を押した者は、運動の始まりを与えたが、転がる性質を与えたのではない。
同じように、表象は心に刻印する。しかし同意は、われわれの力のうちにある。
運命をすべてとする立場が、それでも人の側に何を残したかを示す一節です。押されることは避けられないが、どう転がるかはその物の性質による——外からの力と、自分の側にあるものを分ける形になっています。
これら三つの説は、賢者に問い詰めれば、突き詰めるとなすことがないという所に行き着く。
すべては過去の業ゆえだという説、神が創ったゆえだという説、因も縁もないという説である。
業を説く側が、「すべては過去の業ゆえだ」という説を退けている箇所です。退ける理由は、そう考えると殺生も盗みもそのせいだということになり、なすべきこととなすべきでないことの区別が失われるからだと述べられます。
この節は、読者に見える形で置いています。どこまで確かめたかを隠さないことが、引用される条件だと考えています。
| 出典 | 使った箇所 | 状況 |
|---|---|---|
| シャンカラ『ブラフマ・スートラ註解』序論 | 01節 | 照会済 |
| イーシュヴァラクリシュナ『サーンキヤ・カーリカー』第19偈 | 01節 | 照会済 |
| 『バガヴァッド・ギーター』18章61節 | 01節 | 照会済 |
| ウマースヴァーティ『タットヴァールタ・スートラ』8章2節 | 01節 | 照会済 |
| 増支部3.61(ティッターヤタナ経) | 01節 | 照会済 |
| 世親『阿毘達磨倶舎論』業品 | 01節 | 照会済 |
| 『倶舎論』破我品に引かれた説 | 01節 | 照会済 |
| 世親『唯識三十頌』(玄奘訳) | 01節 | 照会済 |
| 護法釈『成唯識論』 | 01節 | 照会済 |
| 『無量寿経』第十八願 | 01節 | 照会済 |
| 親鸞『教行信証』 | 01節 | 照会済 |
| 道元『弁道話』1231年 | 01節 | 照会済 |
| シャーンティデーヴァ『入菩薩行論』(700年頃) | 01節 | 照会済 |
| 『グル・グラント・サーヒブ』1245ページ(三つの務め) | 01節 | 照会済 |
| 『論語』為政篇 第4章 | 01節 | 照会済 |
| 堯曰篇 第3章 | 01節 | 照会済 |
| 『荘子』大宗師篇 | 01節 | 照会済 |
| 『古事記』上巻(天地初発之時) | 01節 | 照会済 |
| 柳田国男『先祖の話』1946年 | 01節 | 照会済 |
| ミシュナ『アヴォート篇』3章15節 | 01節 | 照会済 |
| 『ゾーハル』(1280年代・邦訳 法政大学出版局2012年) | 01節 | 照会済 |
| 『カトリック教会のカテキズム』1731〜1742 | 01節 | 照会済 |
| グレゴリオス・パラマス(本質とエネルゲイアの区別) | 01節 | 照会済 |
| カルヴァン『キリスト教綱要』第三篇第二十一章 第5節 | 01節 | 照会済 |
| サヒーフ・ムスリム 8a(ジブリールのハディース) | 01節 | 照会済 |
| クルアーン 57章22節 | 01節 | 照会済 |
| クライニー『アル・カーフィー』(10世紀) | 01節 | 照会済 |
| ガザーリー『宗教諸学の再興』 | 01節 | 照会済 |
| プラトン『国家』第十巻614a〜621d(エルの物語) | 01節 | 照会済 |
| エピクロス『メノイケウス宛書簡』 | 01節 | 照会済 |
| キケロ『運命について』42〜43節(クリュシッポスの円筒) | 01節 | 照会済 |
| デカルト『省察』1641年 | 01節 | 照会済 |
| スピノザ『エチカ』第一部 定理29 | 01節 | 照会済 |
| カント『純粋理性批判』第三アンチノミー(A444/B472) | 01節 | 照会済 |
| ハイデガー『存在と時間』第29節(被投性) | 01節 | 照会済 |
| サルトル『実存主義とは何か』1946年 | 01節 | 照会済 |
| ユング『元型論』Ⅰ「集合的無意識の概念」(林道義訳・紀伊國屋書店) | 01節 | 照会済 |
| フランクル『死と愛』第二章第一節「人生の意味」(霜山徳爾訳・みすず書房) | 01節 | 照会済 |
| リベットら『Brain』106巻 1983年 623〜642頁 | 01節 | 照会済 |
| シュルガーら『PNAS』109巻 2012年 | 01節 | 照会済 |
| フツイマとカークパトリック『Evolution』第5版 2022年 | 01節 | 照会済 |
| プランク共同研究『Planck 2018 results VI』2020年 | 01節 | 照会済 |
| サクライとナポリターノ『Modern Quantum Mechanics』第3版 2020年 1章4節 | 01節 | 照会済 |
| H・P・ブラヴァツキー『The Secret Doctrine』全2巻 1888年 | 01節 | 照会済 |
| 系譜「引き寄せ・波動はどこから来たか」 | 01節 | 照会済 |
| AWARE研究 2008〜2014 | 01節 | 照会済 |
| ラッセル「自由人の信仰」(『神秘主義と論理』江森巳之助訳・みすず書房) | 01節 | 照会済 |
| スタンフォード哲学百科事典「Causal Determinism」(2023年改訂) | 03節 | 記述を確認 |
| スタンフォード哲学百科事典「Free Will」3.1節 | 03節 | 記述を確認 |
| ベル『Physics』1巻3号 1964年 195〜200頁/SEP「Bell's Theorem」 | 03節 | 巻号と前提の記述を確認 |
| キケロ『運命について』42〜43節 | 04節 | 原文を確認 |